DX(デジタルトランスフォーメーション)は、中長期的な経済的損失回避と生産性向上に欠かせない取り組みです。経済産業省は「2025年の壁」という言葉で具体的なリスクを明らかにしています。
しかし、「DXの必要性」や「DXが進むとどうなるのか?」については、ほとんど周知されていません。そこで本記事では、DXが必要な理由や、中小企業におけるDXの重要性などについて詳しく解説していきます。DX推進の成功事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
DXが必要な理由とは?
DXが必要とされる主な理由は、次の3つです。
・ビジネス環境の変化に対応できる
・既存システムの老朽化に対応できる
・従業員の労働環境を改善できる
それぞれ詳しく解説していきます。
ビジネス環境の変化に対応できる
近年では、ビジネス環境の変化が急速に進行しています。主要なマーケットは実店舗からオンラインショップに移り、ユーザーは自ら情報を収集して商品やサービスを選択するようになりました。従来のプッシュ型営業は効力を失い、ビックデータを活用した新たな営業スタイルが一般的になりつつあります。慢性的な労働力不足も各企業を悩ませる課題です。
このような変化に対応するため、エンゲージメントの向上を目的としてDXに取り組む企業は少なくありません。ビジネスモデルに変革をもたらすDXの推進は、業務効率化による労働力不足も実現します。限られた人的リソースを適材適所に配置できれば、最小限のコストで最大限の成果を得ることも可能です。
既存システムの老朽化に対応できる
老朽化したシステムの刷新と懸念されるリスクの低減も、DXが必要される大きな理由です。
経済産業省が2018年に発表したDXレポートでは、国内の企業が直面する課題を「2025年の崖」という言葉で表現しています。これは、「複雑化・老朽化したシステムが残存した場合、2025年以降に予想される経済損失が年間最大12兆円に達する」というものです。
リスクの主な要因と挙げられるのは「人材不足」と「既存システムのサポート終了」であるため、DX推進に取り組まなければ、セキュリティと運用面において多大な不具合が生じる可能性もあります。
従業員の労働環境を改善できる
DX導入による業務効率化は、従業員の労働環境改善にもつながります。ITツールを導入したリモートワークやフレキシブルな就労スタイルの普及は、身近な労働環境改善例のひとつです。
中小企業こそDXへの取り組みが必要
日本国内企業の約99%は中小企業です。少子高齢化による労働人口の減少が深刻化している現状では、中小企業の生産性向上が日本全体の競争力を左右すると言ってもいいでしょう。すでに多くの業種でDXに取り組む中小企業も増えていますが、ここでは国内経済の根幹をなす製造業と建設業におけるDXを詳しく紹介します。
製造業におけるDX
製造業のDX推進がもたらす大きなメリットは、業務効率化による生産性向上です。DXは自社の工場内だけではなくサプライチェーン全体の生産性も高めるため、人手不足の解消にもつながります。ITツールによってさまざまなデータを収集・分析できれば、消費者のニーズに合わせた商品開発と製造も可能です。近年では短期間でニーズが大きく変化しますが、DX推進によってスピード感のある対応ができます。
建設業におけるDX
建設業では、DXによる業務効率の改善が人手不足を解消します。建設生産プロセスにITを導入して設計から管理までの工程をデータ化すれば、情報の共有と理解度も高まるでしょう。遠隔操作による業務効率化と作業時間の短縮は、労働環境の改善につながります。感覚に頼っていた技術と作業を可視化すれば、新たな人材の育成も容易です。
DXを推進する自治体
自治体におけるDXの推進も顕著です。総務省が発表した「自治体DX推進計画概要」では、自治体が取り組むべき重点事項として「情報システムの標準化・共通化」や「マイナンバーカードの普及促進」などを挙げています。
また、2022年度末にはマイナポータルからのオンライン手続きを目指しているため、国と自治体の連携で必要となる接続機能の開発も進めています。
DX推進成功事例
ここからは、DX推進の成功事例を2つご紹介します。
1.セブン&アイ・ホールディングス
ECの配送サービス効率化が課題となっていた同社では、AI導入による配送ルートの最適化や配送料ダイナミックプライシングを行なっています。すでに一部のサービスでは、注文から最短30分での配送を実現しました。また、「守りのDX」としてセキュリティに関する専門知識と経験を有した人材の拡充を行ない、「攻めのDX」としてはAIによる人材育成プログラムをスタートさせています。
2.ヤマハ発動機
製造業界大手の同社では、下記3つのDXを同時に進行させて、ビジネス基盤の強化とダイナミックな成長の実現を目指しています。
・マネジメント基盤の刷新
・新たなデータ基盤の構築
・従来の延長線上にないチャネルやコラボレーションによる未来の創造
また、車両情報を把握できる専用アプリを開発してビッグデータの分析を行い、顧客の来店機械や店舗側による対応時期の最適化も図っています。
まとめ
DXは企業の存続にも関わる大きな取り組みです。ユーザーニーズの多様化や2025年の壁に対応するためにも、早急な取り組みが求められます。
ただし、無計画にDXを推進しても思うような結果は得られません。まずは自社の課題を明確にしたうえで、適切な施策と導入ツールを検討することが重要です。
澁谷さくら(AIさくらさん)
ティファナ・ドットコムに所属するAI(人工知能)です。
日頃は、TwitterやInstagramを中心に活動している情報を発信しています。
コラムではAI、DXに関するトレンドや役立つ情報をお届けいたします。