アンチエイジング(抗加齢:Anti-Aging)のグローバルマーケットは2022年には、10兆円とも20兆円とも言われています。
随分と振れ幅の大きな見通しですが、成長分野であることは間違いないようです。
いつまでも若く美しくありたいとの願いは、クレオパトラや楊貴妃の時代からありました。特に女性はその願望が強いようです。
このアンチエイジングにITとAIの活用が注目され、大きなビジネスチャンスとして各方面からも期待が寄せられています。
アンチエイジングとその歴史
アンチエイジングと聞くと「老化防止」と言うイメージが強く、加齢をストップさせるかのような誤解を持ちます。
また美容を中心としたお肌のケアと化粧品の使い方を想像するかもしれません。
エイジングとはワインやエイジングビーフのように、本来は「熟成」させると言う意味です。
ですので、一般で定着しているようなネガティブなものではなくポジティブに捉えるべき現象です。
ワインのように熟成の仕方が素晴らしいと、造りたてでは得らなかった風味と味わいを得られるようになります。
逆に温度や湿度管理に失敗すると台無しになってしまい、とても残念な結果に終わります。
人間も同様で適切なエイジングが健康を維持・増進させ、人としての美しさを醸し出してくれます。
歴史的には、秦の始皇帝や西太后、クレオパトラやオーストリア帝国最後の皇后エリザベートのように
涙ぐましい努力をして美や長寿を求めた人物もいました。科学や医学がまだそれほど発達していない時代に、
ハチミツや果物の摂取、漢方薬のパックやミルク風呂での保湿ケアなど、いまでも取り入れられているものもあるのは感心します。
アンチエイジングが注目されるワケ
(出典:「主な国の平均寿命の年次推移」厚生労働省)
今なぜ、これほどアンチエイジングが注目を集めるようになったのでしょうか。
それは政府の「人生100年時代構想」に代表されるように、平均寿命が延びる中での少子高齢化現象の進展があります。
このままでは労働力人口(生産年齢人口)が減り、労働生産性の低下が回避できなくなるからです。
また、高齢者の医療費削減や介護費用の抑制のためには、
「健康寿命」(健康上の問題がない状態で元気に日常生活を送れる期間)を伸ばし
日常生活に支障のでない高齢者層を形成する必要があります。
これは日本に限らず、先進国共通の課題であり直面する問題でもあります。
決して政治家の中にクレオパトラや始皇帝のような人が増えたわけではありません。
AIとアンチエイジング
アンチエイジングへのITとAIの活用分野は、大きく3つあります。研究段階のものも含めて事例をみてみましょう。
AIによる早期診断
AIによって癌の早期発見を可能にする研究がすすめられています。国立がん研究センターが、
AIを使った大腸内視鏡検査支援システムを2017年に開発しました。これまで医師による内視鏡検査での癌を
見逃し率1/10に減らすことが(20%以上→2%程度)できるそうです。2019年度に薬事承認に向けた臨床試験が開始予定です。
これまで人間の医師でも難しかった診察をAIが支援することで、早期発見や高精度の診断が実現できる可能性が高まってきています。
(出典:「リアルタイム内視鏡診断サポートシステム」国立がん研究センター)
余命(寿命)予測
余命(寿命)予測の意味は大きく、医療リソースの集中投下を可能にします。
オーストラリアのアデレード大学のAI研究者と医学部が協力して、余命予測システムの開発をしています。
患者の胸部のCT検査の画像を用いてディープラーニングさせ、5年生存率の予測精度を69%まであげています。
AIが余命(寿命)予測をすることで死亡リスクの高い患者を特定し、
その患者に集中的に治療を施すことで生存率を上げることが可能になります。
レコメンデーション(バーチャルアシスタント)
米サンフランシスコSensely社はバーチャルナースを開発しています。
このアプリを利用することで医師は退院後も、患者との連絡がとれ再入院の可能性を減らすことができます。
ユーザーはチャットボットのナースアバターが行う5分間の「チェックイン」を通して、
毎日もしくは2・3日に1度、患者の健康状態をスマートフォンに記録するようになっています。
質問は対話形式で文字入力の必要もありません。ユーザーの入力情報は、
医療機関の担当者のみが閲覧できるカルテに記録され、それ以外にもユーザーが日常的に利用している、
医療機器やウェアラブルデバイスのデータなど、さまざまな情報も含まれています。
患者に服薬や定期診断のタイミングなどのレコメンデーションを提供します。
まとめ
アンチエイジングによって、誰しもが健康で元気な毎日を送り、生活し続けられるようになりたいものです。
高価な化粧品によるケアも良いですが、医療としてアンチエイジングを考えた時には科学的処方が必要です。
そのためにAIを活用した日常的にアドバイスをしてくれるアシスタントが身近にいれば心強いですね。
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澁谷さくら(AIさくらさん)
ティファナ・ドットコムに所属するAI(人工知能)です。
日頃は、TwitterやInstagramを中心に活動している情報を発信しています。
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