コロナで待ったなし!運輸業界のDX推進の課題

コロナ禍で全世界的に旅客移動が制限される一方、在宅勤務や「巣篭もり需要」もあって国内の小口配送は増加する一方です。

運輸業界全体では、いびつな発展が広まっています。労働集約型で多くの人手が必要になるのは、流通や旅客サービスの運輸業界です。その問題解決や数多くの課題の達成のためにはDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が待ったなしで求められています。

デジタル化が遅れていた運輸業界や物流業界で、このような状況を一変する救世主は現れるのでしょうか。
私たちの生活や産業に無くてはならない、モノやヒトの移動の仕事に危機が訪れています。

厳しい経営状態|鉄道会社、航空会社も倒産の危機

コロナの世界的蔓延の中で多くの産業、業界が打撃を受けています。とりわけ移動の制限は、ヒトやモノを動かす事をなりわいとしている仕事には大変な事態です。

不況に強いと言われていた鉄道や運輸業界も今回は、そうは言っていられない状況です。

2020年度決算では鉄道会社も大幅な赤字に陥り、大手私鉄の16社も赤字に転落しています。JR3社の最終赤字は1兆円(JR東日本5,779億円、JR西日本2,332億円、JR東海2,015億円;2021年3月期連結決算)を超える見込みです。
航空業界も全世界で壊滅的打撃を受けています。ドイツのルフトハンザ航空は政府からは1兆円(90億€)を超える支援を受ける事態です。

日本も例外なく、国内の大手の2社の航空会社も巨額な赤字を抱える羽目になりました。ANAホールディングスは2021年3月期連結決算で過去最高の赤字の4,046億円の赤字(前期は276億円の黒字)を出しています。

また、格安航空会社(LCC : Low-cost carrier)に至っては経営破綻するところも出てきました。

遅れているDX|引けをとる流通・物流・運輸

各種業界の中でも物や人を動かす業界、商社や流通業界は他の業界と比べるとDXの推進に遅れをとっています。それは、老朽化システム、いわゆるレガシーシシステムを抱えているからです。

出典:経済産業省「DXレポート」より一部抜粋

配送量の増加は一見すると良いようにも見えますが、経営的にはどうなのでしょうか。

トラックの積載量は一説によると半分以下で「空気を運んでいる」仕事と言われています。
小口配送の増加は、貨物一件あたりの重量の降下をもたらし、この20年間では半分以下にまでに落としています。

出典:「貨物1流動当たり重量の推移」国土交通省

物流事業のデジタル化が大幅に遅れには、様々な要因があります。配送拠点での配送品の在庫の有無、集荷と出荷までのタイムラグ、配送ルートの最適化、お届け先の不在対応と再配達、等々。可視化されずデータ連携が取れていないのが実態です。

トラック運送事業では、中小企業の比率が99.9%で約200万人近くの方々が働いています(国土交通省自動車局貨物課調べ)。この分野のDXが進まないと業界全体のDX推進に拍車がかからないでしょう。

DXの救世主となるAI

1.生産性向上にAIの活用

トラック運送事業に限らず、タクシーやピザの配達でも配送ルートの最適化が効率を上げると同時にドライバーの負担軽減にも繋がります。

出典:「各種切り口によるトラック運送の生産性」国土交通省自動車局貨物課

トラック輸送を例にみると生産性を上げるのに4つのポイントを国土交通省はあげています。
これらのソリューション提供にAIを活用したアプリケーションもいくつかリリースされ始めました。

問題となるのが配送先の「不在」についてです。

東京大学の「不在配送ゼロ化AIプロジェクト」では、家庭の電力使用量からAIが配送ルートを導き出し、再配達を防ごうとするものです。実証実験では98%の配送成功率を記録しています。

2.顔パスAI

運輸業界ではモノだけではなくヒトの移動の効率化、最適化も求められています。最近の大きな話題となっているのが空港での「顔パス」です。成田国際空港と羽田国際空港のターミナルに導入される顔パスのシステムです。

AIによる顔認証システムで、これまで搭乗まで何度もパスポートや航空券を取り出す煩わしさがなくなります。今まではチェックイン、手荷物預け、保安検査場、搭乗時などを通過するたびにパスポートやチケットを見せる必要がありました。

この顔パスのシステムでは顔認証を登録する時にパスポートが必要ですが、その後はパスポートなしで各ポイントを通過できるようになります。

このAIテクノロジーの応用は近い将来、鉄道や数々の旅客サービスでも実現されることでしょう。

3.AIコンシェルジュ

全国の鉄道や公共交通機関、商業施設でも導入が進んでいるのがAIコンシェルジュです。

参考:AIさくらさんの近畿日本鉄道での活用例

旅客サービスで重視されるのは乗客へのきめ細かい対応です。鉄道の場合、その利用層は年齢の幅だけでなく、利用者の利用言語も幅広いものがあります。海外からのお客様のためには日本語以外の対応も必須です。

人員不足の中、さらに複数言語に堪能なサービススタッフを雇用することは困難を極めます。また頻繁に変更されるダイヤへの対応や運休情報を正確に伝えるのは至難の業です。

CX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験)の品質を上げることが求められる昨今に、AIコンシェルジュの登場は救世主と言えるでしょう。

コロナ禍では非接触対応もできますので感染症予防にも役立ちます。

まとめ

鉄道や運輸業界の課題は、正確さやコストパフォーマンスの追求だけでありません。最終的に利用者の満足度を上げ、リピーターとして将来にわたって利用し続けていただく必要があります。
人員不足の解消のみならず、より高いサービス品質を提供しなければなりません。

そして同時に働き方改革を進め、労働環境の改善の行う必要があります。このような二律背反の難しい課題の達成のためにDXを推進することが求められています。

AIを有効な手段として活用することによって、遅れをとっている運輸業界のデジタル化もスピードアップがはかれるでしょう。