気象庁の記録では、統計上残っている最多数の台風記録は、発生数で39個(1967年)上陸数では10個(2004年)になります。

大きな災害をもたらす台風ですが、嘆いていても幸せにはなれません。
人工知能(AI)の活用で防災と事前の安全対策、そしてピンチをチャンスに変えるパラダイムチェンジも必要です。

そのような台風への対策とAIがどのようなソリューションを提供できるか検討してみます。

台風発生のメカニズム

台風を活かすも嘆くのも、その発生の仕組みがわからないと、どうしようもありません。

台風とは気象学の定義では、

「熱帯の海上で発生する低気圧を「熱帯低気圧」と呼びますが、
このうち北西太平洋(赤道より北で東経180度より西の領域)または南シナ海に存在し、
なおかつ低気圧域内の最大風速(10分間平均)がおよそ17m/s(34ノット、風力8)以上のものを「台風」と呼びます。」(気象庁)

発生をフロー化すると次のようになります。

ISS009-E-21526.JPG

(出典:「宇宙から見た台風(2004年台風第18号)」(NASA)

南洋の海面上の熱エネルギー

水蒸気の発生
↓ *上昇気流の発生
熱帯低気圧

地球の自転エネルギー

渦の発生
↓ *風力8で「台風」
偏西風による移動

この台風の発生メカニズムをみれば、台風のエネルギー構成要素がわかります。
「熱エネルギー」「地球の自転エネルギー」「風力エネルギー」です。
発生の時期と進路から、さらに正確に台風の動向が解れば災害防止や安全対策にとても役立ちます。
この予測にAIが大きな威力を発揮します。

AIで台風を予測する

現在の気象予測は計算学です。

台風の場合、過去の統計データも相当数あるので大まかな時期や通過地点などは予測が出来ます。
赤ちゃんのご機嫌と同じで、大体の方向はわかるのですが突然ぐずったり泣きだしたりします。

この微妙な先読みはお母さんかスーパーコンピュータ+ AIでないとわかりません。

計算によって台風の進路や強さを割り出し、統計データによって予測を裏付けます。
この組み合わせをAIの機械学習とディープラーニングによって精度を上げるわけです。

しかし、台風や気象予測に伴う誤差は避けて通れません。
気象庁も予報期間に応じて、数値予報モデルを変え、予報領域とメッシュ(格子)間隔を変えて予測します。
各種の数値予報を使って将来の天候を予測しても、長期間の予報は困難です。
この不確定さの要因としては「大気自身の持つ性質」「観測データの不足」「数値予報モデルの限界」などがあげられます。

大気自身の性質

大気のふる舞いにはカオス(混沌、無秩序)性といって、将来の状況を断定的には予測できません。

観測データ不足

大気のふる舞いに影響を与える、海洋・陸地面の状況が
観測データ不足から十分に把握できず、予報開始の初期状態に不確かさが残ります。

数値予報モデルの限界

メッシュの細かさには限界があり、大気のふる舞いを完全には表現できません。

このような天候予測の不確定さの要因は短期予報にも含まれますが、
予報期間が長くなるほど不確定さも大きくなっていきます。
また、観測データ不足や、数値予報モデルの限界は、
気象衛星やスーパーコンピュータの登場によって改善されます。
カオス性による誤差はいくら技術が向上してもゼロになることはないとされていましたが、
これらの誤差を縮小し、長期予報を可能にするAIの活用研究が進められています。

台風をAIでビジネスに変える

台風の生み出すエネルギーは全世界の一か月分に相当すると
試算した研究者もいます。(横浜国立大学筆保弘徳准教授)

台風を構成するエネルギーで、手に届きやすいエネルギーとしては、風力があります。

風力発電のポテンシャルは環境省でも注目しており、
周囲を海で囲まれた日本では「洋上風力発電」が最も有力視されています。

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(出典:「再生可能エネルギーのポテンシャル(潜在能力)比較」(日経ビジネス)
※ 環境省平成22年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査を元に作成

ただここで問題になるのが台風です。一般的な風力発電の「風車」(プロペラ)は
強風の時に破損を回避する為に停止してしまいます。それを風速30m/秒でも発電できる
「垂直軸型マグナス風力発電機」の実証実験が沖縄で成功しています。

このような風力発電のしくみとAIによる的確な気象予報を組み合わせれば、
最適な発電システムが構築できます。特に、離島などの発電エネルギーに
ディーゼル発電機を利用している場所では恒久的に電力不足も解消できます。
また、風力の最適値の算出にAIを用い風力発電機の設置や運用にも役立てられます。

洋上への「風車」の設置は台風の風害の緩和にも一役買ってくれます。
米スタンフォード大学のマーク・ジェイコブソン(Mark Jacobson)教授の研究チームは、
シミュレーションの結果、風力タービンのプロペラが風のエネルギーを大幅に吸収し、
ハリケーンの内部エネルギーの損失に大きな変化をもたらす可能性があることを発表しました。
(英科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)」に発表)

まとめ

台風王国の日本。その台風からの被害を最小限に食い止め、
莫大なエネルギーを日本だけでなく人類の利益にかなうような利用方法の可能性を探ってみました。

改めて自然の偉大さ強大さがわかると同時に、有益なエネルギー源として捉えることができます。
このようにAIを有効に活用すれば、安全対策にもエネルギー問題解消にも
大きなビジネスチャンスを生むものに台風も変貌します。