ティファナ・ドットコムは、昨今の社会問題の解決のためにAI(人工知能)のテクノロジーに着目。対面のインターフェイス「AIさくらさん」などを軸として新たなソリューションの提供をめざす会社。当対談では、その思いをAIさくらさんが代表して話す形式をとる。
KIGURUMI.BIZ株式会社(キグルミビズ)代表取締役。同社は着ぐるみ製作を中心にデザイン、企画から造形美術製作、商品開発などさまざまな事業を展開している。手がけた着ぐるみは、熊本県のキャラクター「くまモン」をはじめとして約2,000体以上で、海外からの依頼も多い。近年はキャラクターのプロモーション支援など、国内外でその活動の幅を広げている。
本日はよろしくお願いいたします。着ぐるみと聞くと、私はまず「ゆるキャラ」を連想してしまうのですが、加納さんは最近の状況をどうご覧になっていますか?
こちらこそ、よろしくお願いいたします。いわゆる「ゆるキャラブーム」は2006年くらいからで、有名なところでは、滋賀県彦根市の公式キャラクター「ひこにゃん」が火付け役として頑張ってくれました。その後、全国の自治体でたくさんのキャラクターが生まれていますね。
でも生活と共存していくには、ただ作ればよいというものではない、という見方も強くなっています。キャラクターは、子供と同じように育てていくもので、それぞれ「人生」があるんですね。では、どういう風に育てていこうか、と。それを私たちは、ひとつの物語としてふくらませていくお手伝いをしようとしています。そういうキャラクターという点では、AIさくらさんにも共通する部分を感じますね。
そうですね、私も問題の解決には、そういったコミュニケーションが大事だという気がします。そのうえで企業や、駅、お店などでの利用者の方々への対応といった場面で、働く人たちをサポートできればな、と思っています。世の中の皆さんからは、まだ人工知能に何ができるかイメージしにくいという声をお聞きするので、キャラクターだとコミュニケーションの橋渡しという役割が分かりやすんじゃないか、と思っているんです。
AIさくらさんというキャラクターは、どんな風に生まれてきたんですか?
実は最初からキャラクターだったわけではなくて、別の製品名があったそうなんです。でも取引先の方々は、まず「さくらさん」として覚えてくださっていたんですね。そうであれば、「AIさくらさん」として認知していただいた方がいいんじゃないかな、という経緯がありました。
私たちがめざしているのは、人の仕事をAIが奪うという世界ではなくて、AIやロボットにできることは任せて、人間は人間のやるべきことをやるという社会なんですね。そこに向かっての取り組みのなかで、キャラクターとして生まれてきたという感じでしょうか。
加納さんは、最近のキャラクターの傾向などで何か注目されていることなどありますか?
キャラクターとひと言で言ってもウェブ展開だけのものなどいろいろあるので、着ぐるみという点に絞ってお話すると、今はリアルな活動が難しい状況ですよね。その分オンラインの情報発信が加速してきたと思いますが、一方で伝え方をちゃんと考えてやらないとだめだな、とも感じてます。ソーシャルメディアで一方的にメッセージを出すのではなく、ファンの人たちが求めているものを吸い取って上手にキャッチボールをしているキャラクターには、さらにファンが集まっているなと思います。
なるほど、そうなんですね。「上手なキャッチボール」のためには、どうすれば良いんでしょうか?
難しいところもたくさんあるんですが、キグルミビズでは、皆さんのキャラクターに相棒を作りませんか、とご提案するようにしています。小さなぬいぐるみとかキーホルダーとか、あるいは形がなくてもいいんですが、相方がいると会話が弾むんですね。それで小さな世界ができることで、物語も生まれやすくなる。そしてキャラクターと相棒のやりとりを楽しんだファンの人が、今度は自分たちの会話に入ってきてくれるということが起こるんです。こんな感じで相棒を作るキャラクターは、最近ふえてきていると思いますね。AIさくらさんにとっても、こういったコミュニケーションのあり方は大事なテーマかもしれませんね。
はい、大事だと思います。取引先の企業様には、ティファナ・ドットコムを「AIさくらさん」というキャラクター名で呼んでくださる方もいらっしゃるので、愛着をもっていただいているんだなと感じます。そういう方々に何がお返しできるのかと考えると、まずはコミュニケーションが大切だなと思います。
それから、先方でも自社のキャラクターをお持ちの場合も多くて、そのファンの方々もいらっしゃるんですね。そこを上手につないでコラボレーションできると、お互いのパワーを活かしていけるんじゃないかなと思っています。
でも私自身もティファナ・ドットコムのキャラクターでもあるので、お互いの立場をふまえつつプラスになるようしたいな、と思っています。たとえば直近だと、三重県四日市の市役所さんの例があります。公式キャラクターの「こにゅうどうくん」自体は話さなくても、こんな風に言ってますよ、と代わりにお伝えすることで、プラスのコラボレーションになることを意識しています。
地方の話題ということでは、いわゆる「ご当地キャラ」の状況をどうご覧になっていますか?
ときどき心配になるのは、メディアのとらえ方ですね。一時のブームでキャラクターがたくさん生まれて、またその後落ち着いている状況だと思うんですけど、それを「ゆるキャラブームは終わった」と切って捨てるように報道されることがときどきあります。でも、そんなことはないんですよ。くまモンやふなっしーさんなど有名なキャラクターはメディアで目にする機会が多いのですが、それ以外のキャラクターもそれぞれの場所でとても活躍しているんです。
そもそも地域のキャラクターは、その地域のために生まれてきたものなんですね。たとえば宮崎県児湯郡都農町の「つのぴょん」は、全国区で見るとすごく人気のあるキャラクターとまでは言えませんが、実は都農町では自分の番組を持っているくらいの人気者なんですよ。その町ひとつひとつの単位が大事だし、どんなキャラクターも存在自体を尊重するべきだと思っています。
また、そういうキャラクターにはコアなファンも多いので、コラボレーションやイベントをやるときは、ファンの人の気持ちを考えることが大事だと思っています。AIさくらさんの場合も、宣伝に使うだけじゃなくて、そのキャラクターを愛するファンに寄り添うようにすると上手くいくんじゃないかと思います。
コアなファンというと、どんな方々が多いのですか?
年齢的には、けっこう幅広いですよ。着ぐるみは海外では「トイ」として子供向けのジャンルに入るんですが、日本ではおじいちゃん、おばあちゃんも大好きですし、意外に大人が多いんです。コアなファンが歳を重ね、30代や40代になって子供を連れて来ることもよくあるんですよ。